丸岡 凛。さんの作品
【イジメ、カッコイイ】《えりさんへの手紙:2通目》(4)
【※作品の中で、いじめ、暴力、差別等を肯定する表現がありますが、あくまでフィクションと捉えてお読みください。
えりさん同意の上、送られてきたメール文面を引用しています。尚、個人情報に関わる部分は加工修正した上で投稿しています。】
階級は産まれた瞬間に既に決められている。
当然、社会に出た今も、負のスパイラルの中にわたしはいる。
出血するわけではない。踏まれるわけではない。餌が喰えないわけではない。
だから気が付くのが遅れるだけだ。この世界の“豚の群れ”は安全地帯から真綿で首を絞めるように徐々に徐々にわたしをはじいていく…
理不尽な裏切りにあった時、相手の露骨な悪意を垣間見た時、わたしの顔は能面のように固まってしまう。
“コイツは何言ってもいい奴”そう思った時の人間は怖い。
どんなに自分が間違っていようと整合性がなかろうと、相手はわたしのことを人間とは思っていないのだから、悔い改めはしないのだ。
能面のような無表情で対峙する。わたしの感情はどんどん無くなっていく。
楽しい事があっても顔が笑っていないとよく言われる。
『笑っても…どうせこの後ハシゴを外すんでしょ?』
顔面の筋肉が笑う事を拒否しているのだろうか…
えりさんから返信が届いた。
【題名:】【金田えりです】
【本文】【凛。さんの考え、私とすっごい近いと思います。
いじめっ子の方が素直で人間的だというのは、私もいつも思ってるんです。
ですから小説でいじめっ子を書いてる時も、自分では魅力的に思っているんです。どこまで伝わってるのかわからないですけど。】
【『>“いじめられっ子側”が置かれた立場に気付くのが遅れ“死の選択権”も自分に委ねられる分、逆に残酷かもしれませんね。』←これは、いじめられっ子の自殺という意味ですか?】
【チャットは、よく下に行ってました。】
http://www.●●●.●/●●/●●●●
【このメールで呼び出してくだされば、時間の許す限り行きますよ。時間があれば今晩でも。壱号室でも弐号室でも、
先に入って下さって待機用プロフィールに「えり待ち」と書いてくだされば。】
【『>でもゾクッとくる言葉責めをしてくれるSさんって以外と少なくないですか?』←本当、少ないです。命令ばかりで言葉責めが苦手な人ばかりですね。】
【えり】
えりさんの放つ【匂い】に自分と同じものを感じた。後に彼女も、わたしに対し同じものを感じていたという。いじめられ経験が転じてマゾになった【終わっている人間】の匂い。
…売春婦だった者だけが放つ冷めた観察者の匂い…
その匂いを互いに確認し合うため、わたしたちはチャットの個室に引き寄せられていった…