R子さんの作品

手記(3)



 そうして授業が終わった後、わたしは体操服の白いシャツと短パンに着替えて、体育館に来ていました。
シューズは使わないと知っていたので、足は靴下だけはいていました。
 練習はじめのミーティングの後、顧問の先生に指示されて、部員全員の前に立って自己紹介をしました。
その後、先生が
「体操部は・・・特に1、2年生のうちは、ちょっと恥ずかしくて嫌なことに耐えなきゃいけないのよ。
その覚悟は、できているわね」と言ったので、「・・・はい。我慢・・・します」と答えました。
その時、自分なりに覚悟を決めたつもりでした。
 そして、とうとう言われました。
「上を脱いで、素足になって、短パン一枚になりなさい」
 一瞬、頭の中が真っ白になって、しばらく動けませんでした。
まさか、全員に注目された状態で脱がされるとは思ってませんでした。
「早くしなさい。みんな待ってるのよ」
 先生にきつい口調で言われて、はっとしました。
そうだ、このまま突っ立ってたら、みんなに迷惑かけてしまう・・・はやく、はやく脱がなきゃ・・・でも・・・。
 とりあえず・・・片足ずつ持ち上げて、靴下を取りました。
それから、両手でシャツのすそをつかんで・・・思い切って、シャツを脱ぎました。
 上半身ブラジャーだけになると、先生がすぐに「下着も取るのよ」と急かすように言いました。
「はい」と返事して、背中に手を回して、ホックの留め金をはずしました。
紐を肩からはずして、左腕で胸をかばうようにして、ブラを取っていきました。
「白いブラ、新しいね」
「おっぱいまだちっちゃいけどかわいい! 隠さないでちゃんと見せて」
 たぶん3年生の先輩が二人、そんなことを言いました。恥ずかしくなって、顔が熱くなりました。
でも、先輩達に言われたとおり、胸を隠していた両腕を体の横に下ろしました。
それから・・・少し笑うようにしました。
つらいけれど、ここで嫌そうな顔をしてしまったら、生意気と受け取られるかもしれないと思ったからです。
頬が引きつってうまく笑えたかどうか自信はなかったけれど・・・。
 わたしが脱いだ衣服を簡単にたたみ終えると、顧問の先生がわたしの方を向きました。
「どう? 今の気分は・・・恥ずかしい?」
 正直に答えました。
「はい。でも・・・がんばります」
 少し寒くて、背中の辺りに鳥肌が立ちました。
その時・・・ああ、今わたし裸なんだ、肩もおなかも、胸も、見られてるんだ・・・
そう意識してしまって、顔がほてってきました。膝が、またかたかたふるえ出しました。
 先生が、ふいに「正座しなさい」と言いました。
言われたとおりにすると、先生はわたしに一枚の紙を手渡しました。
その紙には「入部の誓い三か条」とあって、決まりごとみたいなことが三つ書かれていました。
「この紙に書かれていることを、これから読むのよ。
これは入部の儀式だから、真剣な気持ちで読み上げなさい。」
「は・・い・・・」
 こんな格好で読まされるのは、なんだかはずかしめを受けているような気分でした。
でも、ここまできて逃げるわけにもいかないので、先生に言われたとおりにしました。
「にゅ、入部の誓い三か条・・・。
1、目上の人には逆らいません。
2、どんなにつらくても逃げ出さずにがんばります。
3、練習でつらいことがあっても部外の人には言いません・・・」
 読み終えると、先生はにやっと笑いました。
「ふふっ、なかなかいい声だったわよ。あなた、なかなかいい根性してるじゃない。
でもいいこと? これに逆らったら・・・ただじゃすまないわよ。
他のみんなに迷惑かけることにもなるんだから。
特に、裸で練習させられてるなんて、学校の外で絶対にしゃべっちゃだめよ。
もしばらしたら・・・何をされても文句は言えないわよ」
「はい」
 そんなこと言われなくったって・・・裸にさせられてるなんて恥ずかしいこと、
口がさけても言えるわけありません。
「それにね・・・つらいことがこれだけだと思わないことね。
これからもっともっと、耐えなきゃいけないことはあるんだから」
「はい・・・」
 先生に強く言われて、また怖くなってきました。


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