山女さんの作品


連載小説『MOMO' Passion』第四回 

けれどネットの中は闇だった。
 嘘だらけ。男の妄想だけ。
どこにも本当の私なんかいやしない。
と思っていた矢先、ひとつの書き込みが私の目を射た。
自分は虐めに堪えきれず高校を中退した、現在大検の準備中である、
でも心残りがある、自分の親友が自分の替わりに虐められているらしい、
可哀想でたまらない……。
 私はこの書き込みに嘘を読んだ。
 嫉妬だ。この子は自分の替わりに虐められている子に嫉妬している。
本当は自分が虐められたいのだ。
 私はこの子にメールを送ってみた。
 数度のやりとりの後、驚いたことに、この子は私の最初の高校の後輩だと
言うことがわかった。住所もすぐ近所だった。
「一度会いませんか」と書いてみた。
 話はすぐまとまった。
 駅前の喫茶店でおとなしく目を伏せているちょっと太めの子は、静かに、
「サエラです」
 つるつるの肌、張りのある体型。
 そうだ、私もこんなだったんだ、と思い、気後れしながら、
「エリィです」
 しばらくは会話さえなかった。
けれど、メールを交換する中で互いに理解できるものがあった。
ここは年上の私がリードするべきだろう。
「ねえ、じゃんけんしない?」
「え?」
「負けた方が虐め役、勝った方をこれからラブホで虐めるの。いや?」
 嫌なはずがないのです。サエラは恥ずかしそうに、最初からチョキを出しました。
 私は、予想外の展開に、とっさにグーを出したのです。(続く)

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