山女さんの作品


連載小説『MOMO' Passion』第五回 

「ずるい」とサエラは言った。「年上なのに」
 私はかまわず立ち上がった。
伝票を持って。
「行くよ」
 独身時代、主人と通い詰めたラブホだったのに、はじめての時よりも恐ろしかった。

――女同士は困ります――
 などと言われたらどうしよう。
それよりも、いったい自分は何をしているんだろう、女の子をこんなところに
つれこんで。
ビアンでもないのに。
 駐車場の入り口から入り、サエラには何も相談せずに、いちばん広そうな部屋を
選んだ。なにしろ、ベッドよりも他の場所を使うのだから。
私はためらっているサエラの腕を掴み、エレベーターの中に押し込んだ。
急ぎたかった。
無人のフロントでもどこかで見ているに違いない。
女同士だとばれないようにと思っても無理だ。
二人ともスカートなのだし。
出来るだけ堂々と、スルッと部屋へ入ってしまわなければならない。
 部屋へ入ったとき、私はもう、気疲れでクタクタになってしまっていた。
 けれど、何もかもがうまく行かなかったのは、気疲れだけではなかったろう。
 とにかく、互いに「殺気」というものが欠けているのだ。
 手足や胸を這うホチキスも、そこに殺気がなければただくすぐったいだけで、
私はついに笑い出してしまい、それが伝染したサエラと一緒に、
数分間も笑い続けてしまった。
 これは駄目だとわかり、攻守を交代してサエラに服を脱ぐよう命じた。
 太めかと思ったのは間違いで、締まるところは引き締まり、出るところは出た、
素晴らしい体だった。
まだ染めていない黒髪の流れる肌も美しく、胸とヘアを隠して立つ姿は
男やビアンでなくてもそそられた。 
 けれどそれだけだった。
 サエラが望んでいるような、四つんばいにさせてアソコを点検し、
「もう濡れてるじゃねえかよ、お仕置きだ」
 などと言って浣腸をしようという気にはどうしてもならないのだった。
 どころか、無理して義務を果たした結果、バスルームで洗面器にしゃがみ込んだ
女の裸のあまりの醜悪さに、私自身がトイレに駆け込んで戻してしまったのだった。
イチジク浣腸の差し込まれた肛門と、そこに隣接するグロテスクな部分――。
自分も持っているくせに、これほど醜いものはないとさえ思われ、
耐え難い嫌悪に胃袋が裏返ってしまったのだった。
 すべてが間違いだった。
 ラブホから出て、もう会うこともないだろうサエラと目も合わさず、
私たちはすぐに別れたのだった。(続く)

http://munchmunch.tripod.co.jp/

メニューへ 妄想小説へ 次へ進む

動画 アダルト動画 ライブチャット