山女さんの作品


連載小説『MOMO' Passion』第八回 

翌朝、眠い目をこすりながら朝イチでパソコンに向かった。
 サエラからのメール。
(無題)
 どうせ「お疲れ様」だとかそんなものだろう。
ただ、添付ファイルで映像があるのが気になった。
かなり大きい。本文を眺めた。
「大変なことになりました。詳しくは明日の日曜、午前10時に今日と同じホテルの
506で」
 今日の午前10時って、もう過ぎてるじゃん。
 いったい何が大変なのだろう。
 仕方なく映像ファイルを開けると、そこには、ラブホのフロントでの二人の様子が
くっきりと映し出されているのだった。
私が部屋を選び、ためらうサエラをエレベーターに連れ込むところまで。
日付入りで。
 眠気も何もふっとんだ。
 なぜ?
 どうして?
 錯綜した頭は何も考えることが出来なかった。
 私は携帯から家の電話にかけてベルだけを鳴らし、それに出るフリをした。
トイレにいる主人にもベルの音は聞こえたはずだ。
 トイレから出てきた主人に、
「大変なの、友達が交通事故にあっちゃって。
一人暮らしだから、着替えとか持っていってあげないといけないから、
すぐに出てくるね。パンとか焼いて食べててね」
 ただごとでない雰囲気は主人にも伝わったのだろう。
何も言わず送り出してくれた。
 そして11時にノックしたラブホの部屋のドアは、いかにも頭の悪そうな、
それこそ古い言葉では「ズベ」とでも言うような、若い女に開けられたのだった。
 女の顔を見て、私は心の底から震え上がった。
「遅かったな。もう来ねえかと思って、あんたの分まで虐めてたぜ」
 気がつけばもの凄い音量でモー娘の曲が流れていた。
途切れ途切れに下手な歌詞も混じっていた。
 導き入れられたベッドルームでは6人の若い女がだらしなく座ったり寝そべったり
して、泣きながらモー娘。を踊り、歌う、全裸のサエラを囲んでいた。
「ほら、間違えたぞ! 数えとけよ」と一人が叫んだ。
 私はその女を見て、自分の目を疑った。
 ミチ!
 いやそんなはずはない。
ミチは結婚してご主人の転勤でニューヨークにいるはずだ。
それに、このミチは、あのころのまま、若い。
 私はやっと事情を飲み込んだ。
 ミチには年の10も離れた妹がいた。
しかも、家はホテルを経営していた。
つまりサエラを虐めていたのはミチの妹で、この妹がフロントに居るときに、
私たちは間抜けにもこのホテルに来てしまったのだ。
 モー娘。が終わった。
 泣きながら直立するサエラの周りに女たちは寄りつき、
「七回だな」
 と言うや、一人づつ、ヘアをむしりはじめた。
「いっかぁ〜い」
 と、わざと苦痛を長引かせるようなやり方だった。
 私が来るまでにも同じ虐めがされていたのだろう。
 サエラのヘアはかなり薄くなり、遠目にも、そこは赤く腫れ上がっていた。
 私は恐怖に脚が震え、へなへなと座り込んだ。
 ミチもどきは私の方を見て、
「ちゃんと見とけよ。次はあんたの番だ」
 そう言って、
「にかぁぁ〜〜〜い」
 と、サエラに絹を裂くような叫び声を上げさせたのだった。(続く)

http://munchmunch.tripod.co.jp/

メニューへ 妄想小説へ 次へ進む

動画 アダルト動画 ライブチャット