山女さんの作品


黄金の月日(第三回)


 しばらくは何もなかった。不気味なくらい。
 そして突然、事件は起こった。
 放課後、私はいつものようにコンビニに寄り、コスメなんかをちょっと
手に取ったりして、塾までの時間つぶしに雑誌を眺めていた。
 そこでいきなり、店員に、
「ちょっと、あんた、奥に来てもらおうか」
「なんですか?」
「いいから、早く!」
 ワケがわからず連れて行かれた事務室で、
「ちょっと、その鞄、中身を見せてくれる?」
 万引きと疑ってるのか、それならどうぞ、何にもないから。
 ところが、開けた鞄の奥には、ゾロゾロと、そのコンビニの化粧品が
入っていたのだった。
 私自身が驚いて、口もきけない状態になった。
「これ、まだ精算済んでないよね」
「私、知りません! こんなの、なんで、どうして」
「じゃあどうして、これがあんたの鞄の中にあるの」
「だから、何かの間違いです!」
「間違いじゃないでしょ、だってこれはここにあるんだから」
 それから頭が真っ白になって、停学中のこともあまり憶えてない。
 ただ、この日をさかいに、私がたった一人になってしまったこと
だけはわかっていた。
 誰も、私の言うことを聞いてくれない。
 友達も、先生も、お父さんお母さんも。
 私は無実なの!
 訴えれば訴えるほど、私は一人だった。
 嘘つきケイコ
 万引きケイコ
 私は避けられ、無視され、居ないもののように扱われた。
学校でも家でも、一言も口をきけない日々が続いた。
 イジメでもいい、リンチでもいい、誰かにかまって欲しかった。
 どんな地獄も、この孤独地獄よりはマシだと思った。
 そんなとき、メグミが私に声をかけてきた。

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